2024.01.28

#Marketing

マーケティングにおける「コンセプト」と「ポジショニング」の役割

WEBサイト制作を含めたあらゆるマーケティングの手段において最も重要な用語の一つに「コンセプト」と「ポシショニング」という言葉があります。この2つの言葉は,実は、マーケティングの難しさをそのまま反映している専門用語で、その時々で様々な使われ方をする非常に抽象的な概念とも言えます。

この2つの言葉をしっかり理解し活用することができれば、マーケティングのコツを会得できたと言っても過言ではないとも言えます。

ここでは、「コンセプト」と「ポジショニング」というキーワードを通じて、マーケティングの最も基本的なエッセンスを理解していただくことに主眼を置いてお伝えしてみたいと思います。

マーケティングとクリエイティブの接点

効果を生むWEBサイトや広告は、マーケティングとクリエイティブがうまくマッチして出来上がるものですが、往々にしてこの2つは断絶しがちです。なぜなら、この2つは本質的に全く異なるものだからです。2つの異質なジャンルを有機的に結びつけるためには、橋渡しとなるべき共通語が必要です。「コンセプト」と「ポジショニング」は,その共通語として大変に重要な役割を担っています。

WEBサイトでは、マーケティングとクリエイティブの接点が極めて重要であり、その設定では様々な価値が転換していきます。

WEBサイトを制作する際にはこの転換点を境にして発想を切り替えなければなりません。左側の分野で考える時には、「企業・商品を売る」という目的のもとに論理展開していくのに対して、右側の分野で考える時には、「ユーザーの行動・心理を動かすためにコミュニケーションする」というロジックで展開していきます。

「コンセプト」や「ポジショニング」を考える時には、この転換点に立って、両側を見通す眼を充分に働かせる必要があります。通常は先にマーケティングの側を見て、次にクリエイティブの側を見ますが、考える過程では、何度も視点を逆転させて、左右をバランスよく見渡す必要があります。

なぜコンセプトは難しいのか?

「コンセプト」という言葉は完全に日常用語となっていますが、使う人や使われるシーンによって、時には「考え方」、時には「テーマ」・・というように微妙に意味合いが異なって使われることがあります。

例えば、販促プロモーションを打つプロジェクトにおいて、「コンセプト」「コミュニケーション・コンセプト」「SPコンセプト」「商品コンセプト」「表現コンセプト」、この辺りまではよいのですが、さらに「全体のコンセプト」「基本コンセプト」「売りのコンセプト」などと乱発気味で、ついには、会議の席上、誰かが「本当のコンセプトは何なんだ!?」「キャッチフレーズとどう違うんだ!?」と言い、よく分かっているはずのプロでさえ混乱状態になることも珍しくありません。

マーケティングにおいてコンセプトという言葉が使われ始めたのは、1960年代のアメリカ広告業界であると言われています。初期の頃は「この広告にコンセプトがあるのか・ないか」といった形で使われ、その広告は「大衆の既成概念を打ち破るほどの新しい考え方をもっているかどうか」といった意味でもありました。つまり大衆の心理の中に、あるいは商品自体の中に潜んでいる別の見方・考え方を引き出し、強調したものがコンセプト広告である、とされていました。

この中で、コンセプトは、もともと哲学用語であったことがポイントとなります。「物事をどう捉えるか」という点で、広告は哲学と通じるところがあります。

哲学でいう概念とは「類似の事物を比較して共通の特性をとり出し、それによって事物の本質を言葉で規定するもの」とされています。実はマーケティングにおいてもこれに似た作業を行っています。

例えば、WEBサイトや広告に掲載するキャッチフレーズが、できるだけ短い言葉でその商品が何であるかを表現していなければならないとすれば、まさに「物事の本質を捉える」ことに他なりません。

一言で言い切るためには、よくその物を知り、使う人を知り、世の中を知っていなければできることではありません。コンセプトを発見するには、徹底的に考え、納得いくまで検討を重ねる過程が不可欠となります。

マーケティングにおけるコンセプトとは

前節で述べたように、今日では数多くのコンセプトが氾濫していますが、マーケティングにおいては基本的に以下の2つのコンセプトに集約されます。

●商品コンセプト

商品コンセプトは、「誰にどういう物を売るのか」を明確にすることからはじまります。一見、分かり切ったことのようですが、これは最も大切な出発点になります。

売りたい製品や企業の「ユニークセリングポイント(USP)」と「ユーザーのニーズ」の2つの分析が重なったところに発見されます。

商品コンセプトへのアプローチ

ユーザー(マーケット・ターゲット)に対してこの製品を「どのような物」として提示したら最も魅力的に見えるかを考えます。ユーザーにとって「これはいったい何であるか」を端的に表した言葉が商品コンセプトです。

●表現コンセプト

表現コンセプトとは、ユーザーへ「どのようにコミュニケーションすべきか」を明確にすることです。

商品コンセプトが商品自体を物語る概念であるのに対して、表現コンセプトはその商品を効果的に伝えるためのコミュニケーション概念ということができます。

表現コンセプトはクリエイティブな領域なため、自由な発想の中から選ばれるべきですが、それが的外れな表現とならないために、いくつかの留意すべき点があります。

 

●明確な目的

WEBサイトや広告の目的・ゴールを意識することが重要です。目的が知名度アップならば、表現でもブランド・ネームをクローズ・アップさせなければなりません。また,イメージ・アップ、あるいはパッケージや価格の変更など、商品特性が変わったことの周知を目的とする場合、話題性を盛り上げることを目的とするケース等々,課せられた戦略的狙いを確認することがまず必要です。

 

●競合の表現の考慮

通常は、競合製品や企業など競争相手といかに差別して、魅力的に見せるかが課題になります。

 

●時代性の勘案

表現コンセプトが、時代の価値観と一致すると、より強いパワーが生まれます。時代の流れや世の風潮に逆行する内容を表現する場合には、それなりの配慮、言いまわしが必要になります。

 

●訴求対象を充分にイメージングします。

通常マーケット・ターゲットとイコールの訴求対象の場合が多いのですが、ときには、その中の一部に絞り込んで、輪郭のきわ立った広告表現にする場合も少なくありません。

 

ここで「典型的なターゲット像」を考え、できるだけ具体的にイメージングすることが必要になります。

表現コンセプトのアプローチ

商品コンセプトと表現コンセプトは、時に、同一である場合もありますが、基本的には密接な関係を持ちながらも異なったものになる場合が圧倒的です。

表現コンセプトの設定は、デザインやコピーといった「表現」の創造作業において最も重要な部分にあたります。表現コンセプトの良否が、そのままプロジェクトの成否に直結するといっても過言ではありません。

WEBサイト・広告制作における概念のフロー

ポジショニングとは

ポジショニングは、コンセプトと同じように、WEBサイトや広告制作において非常に重要な役割を果たします。前述のフローのいずれのステップでも使えるもので、その使い方はコンセプトよりも応用が要求されます。

ポジショニングとは、一定の尺度の中に、物事を位置づけることで、最もわかりやすい例は、幾何学でいうX軸Y軸の座標軸によってスケールされた空間に、点をプロットしていきます。

この世の中に存在するものは、一つとして単独で切り離されて存在しているものはありません。すべては、集団社会の中で、お互いに関係し合って存在しています。つまり、他社との比較なしでは、物事は捉えられないわけです。この考え方をマーケティングやツール制作に応用したのがポジショニングです。

誰にでも、頭の中にすでに作り上げられている既成概念があり、そのどこかに新しいものを位置づけようとするのです。したがって、ポジショニングを考えるときには、まず初めに一般的な常識を下敷きに出発します。

製品ポジショニングの例

その過程で競合製品群の中に自社製品を位置づける際に、常識的な軸で考えてみると、どうしても自社に都合の悪い軸があることがわかります。

このように都合の悪い軸がある場合、それを除外するか、あるいは都合のよい軸(例えば、価格が安いが高級感はない→合理的なクルマ)に変えてしまうことが得策です。

ここが、まさに、マーケティングとクリエイティブの接点で起こる価値転換の重要なところです。常識が転じて、新しさが生まれるのです。自分にとって、有利なポジショニング軸の発見になります。

イメージの領域でも、ポジショニングが有効に用いられています。イメージには、製品イメージ、企業イメージ、広告イメージなどがありますが、多くの場合,それらはアイデンティティ(自己の同一化)がとられているので、どのイメージをとり上げても、分析結果はだいたい似通ってきます。

例えば日本の家電メーカーPanasonicといえば「親しみやすさ」「暖かさ」というイメージで信頼と好意を勝ちとってきたのに対し、ソニーは「ユニークさ」「先端性」「シャープさ」といったイメージで独自のポジショニングを図ってきました。

このように、デザインやコピーといった表現のイメージやトーンでも、ポジショニングを明確にし,差別化することで、他社に埋もれない際立った表現を作り上げていきます。