2024.04.08

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多言語WEBサイトを制作するうえで必要なUIとUXのローカライぜーションとは

タイやASEANなどグローバル市場に進出する企業にとって多言語WEBサイトの制作は、成功に向けた重要な一歩だと言えます。日本とは異なる言語や文化を持つ国々に向けたWEBサイトでは、ただ単に言語を翻訳するだけでなく、UI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザーエクスペリエンス)のローカリゼーションにも目を向けることで、ブランドイメージを担保した統一感のあるデザインで、かつ各国のユーザーに違和感のないコンテンツを制作していくことができます。

WEBサイトにおけるUIとUXとは

そもそもWEBサイトのUI/UXとはいったい何なのでしょうか。

UIは「 ユーザー インターフェイス」の略で、簡単に言うと、人々がコンピューターシステム、デジタルデバイス、アプリケーションなどとやり取りするための手段や接点のことです。これにはWEBサイトのページをはじめ、スマートフォンの画面、テレビのリモコン、またはATMのボタンなど、あらゆる電子機器とユーザーが操作するものが含まれます。UIは、人と機械の間の橋渡し役を担っており、使いやすさや視覚的魅力を通じて、製品やサービスの利用経験を直接形作ります。

UIにはボタン、アイコン、色、テキスト、画像、スライダー、フォームなどの要素が含まれ、これらを組み合わせることで直感的で理解しやすい操作環境が作り出されます。たとえば、WEBサイトで「購入」ボタンを押すとき、そのボタンのデザインや配置、そして押した際の反応はすべてUIの一部です。

良いUIデザインは、単に見た目が美しいだけでなく、ユーザーが目的を達成するための道筋を明確にし、必要な操作を直感的に理解できるようにするものです。これにより、製品やサービスの使い勝手が向上し、最終的にはユーザーの満足度やロイヤリティに結びついていきます。

UIはユーザーとデジタル世界とをつなぐ接点であり、使いやすさ、アクセス性、ユーザーの体験を豊かにする要素が集まった重要な概念です。日常生活で無数に触れるデジタル製品やサービスの中で、UIはまさに私たちがテクノロジーとコミュニケーションを取る窓口といえます。

一方でUXとは、「ユーザーエクスペリエンス」の略称で、デジタル製品やサービスを利用する際のユーザーの体験全体を指します。これは、WEBサイトを訪れたとき、アプリを使ったとき、あるいは電子機器を操作したときのことで、見た目のデザインだけでなく、使い勝手、効率性、感情的な反応まで含みます。

例えば、オンラインショッピングで買い物をするときに、商品の探しやすさ、購入プロセスがスムーズか、問い合わせた際の対応は親切かなど、これら全てがUXの範疇に入ります。良いUXは、ユーザーが製品やサービスを使って目的を達成できるだけでなく、使い心地が良く、満足感を得られるような設計がされています。

つまり、UXはユーザーの立場に立って考え、デジタル製品やサービスを使う「全体的な体験」をデザインすることです。ユーザーが直面する問題を解決し、使うたびに快適さや喜びを感じられるように工夫されています。そのため、UXデザイナーは、ユーザーのニーズや課題を深く理解し、それに対する解決策をデザインする役割を担っています。

簡単に言えば、UXはユーザーがデジタル製品やサービスとどのように関わり、どのように感じるかについての全てです。良いUXデザインは、使いやすさ、アクセシビリティ、効率性を重視し、ユーザーにとって価値のある体験を提供することで、最終的にはユーザーの満足度を高め、製品やサービスの成功につながります。

UIとUXのローカライゼーションとは

UI および UX のローカライゼーションは、デジタル製品のUI/UXを様ざまなユーザーの言語、文化的ニュアンス、地域の好みに合わせて調整するプロセスです。これにはUI 要素の翻訳、デザインレイアウトの変更、ワークフローをよりネイティブに感じられるように調整することが含まれます。

WEBサイトにおいてUX/UI ローカライゼーションを実現することにより、グローバルに一貫性がありながらローカルにパーソナライズされたと感じられるユーザー エクスペリエンスを作成でき、ユーザー エンゲージメントと維持率の向上に寄与します。

ローカライズされたUI / UXが重要な理由とは

かつてはWEBサイトの多言語化はある種“オプション”的な位置づけにあり、グローバルに事業を展開するリソースを持つ少数の大手企業に限られた選択肢と言えました。また、本質的に英語はインターネットの言語であったため、それは主に英語圏を中心に行われてきたものでした。

今日では、デジタル環境は深刻な変化を遂げており、WEBサイトのユーザーには、様ざまな文化的背景を持ち、様ざまな言語を話す人々が含まれています。つまりローカライゼーションは、現代の企業にとってオプションの贅沢品から必需品へと移行しました。

UI/UX ローカライゼーションとは、国や地域に関係なく、各ユーザーにとって自然で直観的に感じられるデジタル環境を構築することにあります。

また実は、英語を話すインターネットユーザーは、世界のインターネット人口の 25.9% しか占めていません。WEBサイトをローカライズすることで、英語主体の言語では見落とされていた残りの74.1% のインターネット ユーザーへのアプローチへの扉が開かれると言えます。

UI/UX ローカリゼーションはユーザーの満足度だけでなく、WEBサイトから生み出される収益にもダイレクトに影響します。効率的にローカライズする企業は、これらの新しい市場で収益を拡大できます。

WEBサイトにおけるUI・UXのローカライゼーションを実現させるための主要なステップ

WEBサイトにおけるUI・UXのローカライゼーションを実現させるための主要なステップについてご紹介します。

1. ローカライズのプランニング

WEBサイトの効果的な UI と UX のローカライゼーションを実現するためには、初期段階から多言語化を考慮し設計を行うことが求められます。

どこにローカライズするのか、その理由は何なのか、そしてターゲット市場のオンライン上での行動を理解しておくことで、ユーザーの心に直感的に響くUI/UX が実現できます。

また、現地の人に違和感なく受け入れられる、ローカル感のあるWEBサイトを作成するには、計画段階で色、記号、画像、日付形式、および数値体系の文化的解釈を考慮します。

 

基本的に、ローカライズの計画には、世界中の様ざまなユーザーの要件を認識し、予測することが不可欠です。これは UI ローカリゼーションプロセスの最初の、そしておそらく最も重要な段階であり、後続のフェーズの方向性を決定します。

シンボル、アイコン、配色は文化的に適切でありその意味は明確であるかどうかという文化的互換性、言語間のスクリプトの方向、テキストの長さ、文字サイズの違いに適応しやすいレイアウトの柔軟性、ターゲット市場のデジタル慣習と一致しているかといったナビゲーションの情報構成、などを考慮して計画・設計を行う必要があります。

2.WEBサイトの国際化(インターナショナリゼーション)

WEBサイトにおけるレイアウトやソースコードの国際化(インターナショナリゼーション)は、WEBサイトのローカライゼーションの土台づくりとも言える工程です。あらかじめ国際化した制作を行うことで、将来的に対応言語を増やすといった場合にも、リソースを消費する大幅な変更を必要とせずに、WEBサイトを他の言語、地域、文化で使用しやすいように準備できます。

このアプローチにおいても、異なる文化間でも直感的に親しみを感じられるUI/UXを作成するために、該当する国への文化的および言語的背景を深く理解する必要があります。

国際化フェーズで考慮すべき事項のいくつかご紹介します。

視覚的要素への考慮

画像やアイコンから使用するカラー パレットに至るまで、デザインのあらゆる視覚的側面を慎重に検討する必要があります。たとえば、色の象徴性を考えてみましょう。中国では赤は幸運を象徴しますが、多くの西洋文化では赤は危険や警告と関連付けられています。このような文化的な違いを認識しておくことで、意図しないマイナスの影響を防ぐことができます。

レイアウトの調整

テキストに関しては、1 つのサイズですべて言語に適合できるわけではありません。言語が異なれば占有するスペースも異なります。通常、ドイツ語の単語は英語よりも長く、アラビア語とヘブライ語は右から左に読まれます。これらの言語のバリエーションに柔軟に対応できるレイアウトを設計すると、市場全体でWEBサイトのデザイン性と機能性の両立を維持することができます。

メニューの表示

メニューの翻訳を計画する際には、いくつかの注意点があります。まず、翻訳後のテキストが元の言語よりも長くなる可能性があるため、テキストが適切に収まるようにスペースを考慮しておく必要があります。また、メニュー内の日付、時刻、数値などを表示する場合、各国の文化的な表記方法に合わせることが大切です。

テキストを含む画像への考慮

画像にテキストを埋め込むデザインは、翻訳に大きな課題となるためできるだけ避ける必要があります。極力HTMLテキストを使用する、またはユニバーサル シンボル(文化や言語を超えて広く理解される、普遍的な記号やマーク)などを活用することで、ローカライズ対応を容易にします。

3. 翻訳とコンテンツのローカライゼーション

翻訳とコンテンツのローカライゼーションには、ユーザーの言語や文化に合わせて製品のコンテンツを特定して変更することが含まれます。このステップでは、WEBサイトのあらゆる部分をユーザーの考え方や生活に合わせて調整していきます。

テキスト コンテンツ

これには、アプリ内メッセージ、バッジ、CTA からプッシュ通知まで、ユーザーが読むすべての単語が含まれます。単に母国語に直接翻訳するだけではなく、メッセージが彼らの文化の中で意味をなすものであることを確認することが重要です。例えば、ボタンやエラー メッセージなどの小さなテキストに至るまで、翻訳する場合には、元の意味、語調、簡潔さを保つことを意識することも重要です。

非テキストコンテンツ

これには、ビジュアル、サウンド、画像、その他の要素が含まれます。配色やサウンドに至るまで、すべてがユーザーが親しみやすく快適だと感じるものと調和している必要があります。例えば、フィットネス アプリで BGM を流すとしたら、その音楽は、地域の人々の動きを促すものと一致している必要があります。

マーケティング資料

電子メール、ソーシャル メディアの投稿、Web サイトのコンテンツ、広告のいずれであっても、マーケティング戦略のあらゆる部分がユーザーの言語でユーザーに語りかけ、ユーザーの文化的規範に応える必要があります。

法的文書およびサポート文書

プライバシー ポリシー、サービス利用規約、サポート ガイドなどの文書は、翻訳するだけでなく、現地の法律や規制に準拠する必要があります。

 

言語構造や文化的参照の違いによる問題の発生を避けるためには、経験を積んだプロの翻訳者と制作者がチームとなってプロジェクトに取り組むことが求められます。WEBサイトの均一性を失うことなく、各ターゲット市場の文化に自然に適合することを保証する知識と経験を活かしていく必要があります。

4: 評価と反復

対象ユーザーの反応を分析し、主要なパフォーマンス指標を追跡することが含まれます。ユーザー エンゲージメント、ダウンロード、レビューは、ローカリゼーションの取り組みが成功したかどうかを示す重要な指標です。

ローカリゼーションは 1 回限りの作業ではないことに留意してください。それは時間の経過とともに進化する反復サイクルです。発売後の一貫した評価により、製品がすべての市場で関連性と競争力を維持できるようになります。

グローバルな視点でのUI/UXは、単に言語や色の違いを調整するだけではなく、異なる文化的な背景を持つユーザーが直面する独自の感覚を理解しながら、ブランドとしての統一感や効率性など、様々な角度に目を向けることが重要だと考えます。