WEB媒体と印刷媒体の違い -タイBtoB市場特有の印刷媒体とWEB媒体の使い分けとは-

企業がどのように情報を発信し、どのように相手に印象を残すか──これはブランディングや営業活動に直結する、経営上の重要なテーマです。とくにタイで事業を展開する日系企業にとっては、ローカルと日本双方の視点を意識した“広報の設計”がますます重要になっています。

その中で、よくある見られるのが「WEBか紙か、どちらを使うべきか?」といったお悩みです。しかし、今の時代においては、どちらか一方を選ぶのではなく、それぞれの特性を理解し、目的や対象に応じて“役割を分担する”という視点が必要だと考えます。

本記事では、コーポレートサイトやSNS、メルマガなどを含むWEB媒体と、会社案内・パンフレット・フリーペーパー広告などの印刷媒体を比較しながら、日系企業のタイにおける使い分けの考え方をご紹介します。

なぜ今、印刷媒体なのか?

印刷媒体には、「目に見える質感」「手元に残る安心感」「じっくり読ませる力」といった独自の魅力があります。WEB上の情報が次々と流れていく中で、紙媒体は“物理的に存在する”ことで記憶に残りやすく、落ち着いて向き合ってもらえる特性があります。

また、WEBは基本的に“自分が見たい情報”を探しにいくメディアであるのに対し、紙媒体は“意図せず目に入る情報”との偶発的な出会いを生みやすいという違いも見逃せません。

例えば、パンフレットをパラパラとめくる中で、自分の関心とは少し離れた情報にも自然と視線が向かうことがあります。これは、WEBのように目的が絞られていないからこそ起こる、情報との受動的な接触の機会です。

とくに近年では、脳科学や認知心理学の分野でも「紙に触れること」が記憶や理解に与える影響が再評価されています。

例えば、紙媒体では情報が空間的に配置されているため、脳は情報の位置やページ構成とセットで記憶を形成しやすいと言われています。これは、視覚的な位置や構成が情報の記憶を助ける「マインドマップ的認知」とも呼ばれ、記憶の定着や後からの検索性(思い出しやすさ)を高めるという点で、WEBのフラットな情報構造とは異なる強みです。

さらに、紙を手に取るという「行動」が伴うことによって、情報に対する身体的な関与度(エンゲージメント)が高まるとも言われています。スマートフォンで流し読みされるWEB情報に比べて、紙媒体は**“読む姿勢”を整える時間を生み出し、情報への向き合い方を変える効果**があるのです。

特にタイのビジネスシーンでは、展示会や商談、工場見学など、対面のやりとりが重視される場面が多くあります。そうしたリアルな場面では、企業の姿勢や丁寧さを直感的に伝える手段が求められます。質感のある印刷物は、感覚と感情に直接訴えるコミュニケーションツールとして、その強みを発揮します。

印刷媒体の主な種類とその役割──WEBとの連携で生まれる相乗効果

印刷物にはそれぞれ特性があり、使う場面や伝える内容によって適切な設計が求められます。ここでは、在タイ日系企業が活用しやすい主な印刷媒体とその役割、そしてWEBとの連携による活用アイデアをあわせてご紹介します。

■ 会社案内・サービスパンフレット

企業の理念・特徴・沿革・提供サービスなどを総合的に伝える資料。商談や展示会、採用活動など、様ざまな場面で“企業の顔”として使われます。丁寧に作り込まれたパンフレットは、企業の誠実さや信頼感を伝える上で非常に有効です。

WEBとの連携のヒント:
・パンフレット内にQRコードを掲載し、製品ページや導入事例ページに誘導
・紙面では全体像を伝え、詳細情報や動画・PDFなどはWEBで補完
・オンライン資料請求フォームからパンフレットのPDFダウンロードを提供することで、WEB上でも活用可能に

■ 製品カタログ・技術資料

スペックや構造、導入メリットなど、技術的な内容を詳しく説明するための印刷物。特にBtoB商材では、導入検討時の参考資料として“何度も読み返される”存在になります。手に取ってじっくり確認できる紙のカタログは、信頼感のある技術提案のベースとして不可欠です。

WEBとの連携のヒント:
・印刷物で全体像を提示しつつ、より詳細な仕様や関連資料をWEBに補完的に配置することで、技術情報を段階的に伝える設計に
・カタログで紹介した製品に対応するWEBページへ誘導し、動画や3Dビューなど紙では伝えきれない内容を拡張的に提供
・カタログ内にQRコードやURLを掲載し、問い合わせフォームや導入事例ページへ自然に誘導する導線を設計

■ DM(ダイレクトメール)・営業資料

特定の相手に向けて資料を郵送・手渡しすることで、個別性の高いアプローチを実現。デジタルの情報洪水の中で“届く”紙のDMは、印象に残るメディアとして再評価されています

WEBとの連携のヒント:
・DMからの反応を計測するために、個別の短縮URLやQRコードを挿入し、専用のランディングページへ誘導
・資料請求やお問合せフォームと連携しアクションへ繋げる
・開封後のフォローとして、SNS広告やメール配信を組み合わせる

■ 雑誌広告・業界紙・フリーペーパー掲載

特定業界・属性にリーチできる媒体に広告を出稿することで、知名度やブランド認知を拡大。特に在タイの日本人向けフリーペーパーは、ローカルでの信頼ある接点として根強く機能しています。

WEBとの連携のヒント:
・広告にQRコードやキャンペーンコードを記載して、専用LPやキャンペーンページに誘導
・雑誌広告の内容と同一トーンで、SNS広告やWEBバナー展開を連動させることで相乗効果を
・掲載記事やタイアップ記事をWEB記事として二次活用し、SEOにも寄与させる

■ 名刺・封筒・営業ツール類

商談・打ち合わせ時に渡されるペーパーアイテムは、企業の印象を決定づける大切な要素。ブランドイメージに一貫性を持たせたデザインが、信頼構築につながります

WEBとの連携のヒント:
・名刺にコーポレートサイトやLinkedIn、製品ページのQRコードを入れてWEB接点を増やす
・提案資料と封筒をブランドカラーで統一し、紙とWEBのトーンを揃えることで印象を強化
・封筒に記載されたURLやキャンペーンバナーと、WEBキャンペーンの動線を連携

このように、印刷媒体ごとに最適なWEB連携の形があります。ただの“紙の資料”で終わらせず、WEBとの接点を意識して設計することで、印刷物の価値はさらに高まります。

展示会、オフィスへの訪問時などは丁寧に作り込まれた会社案内やパンフレットが有効

タイでは、企業規模やターゲット層、業種によって最適な媒体の組み合わせが変わってきます。加えて、都市部と地方、オンラインとオフライン、BtoBとBtoCなど、接点の持ち方が多様化している点も特徴です。そのため、「誰に・どのようなタイミングで・どんな情報を届けたいのか」を軸に、媒体の選定と組み合わせを設計する必要があります。

商談や展示会、オフィスへの訪問時など

商談や展示会、オフィスへの訪問時など、対面で信頼構築が求められる場面では、丁寧に作り込まれた会社案内やパンフレットが極めて有効です。

特に在タイ日本人のビジネスパーソンは、業務でタイ語や英語を使いこなしていても、最終的な判断や詳細確認の段階では、日本語の資料を求める傾向があります。会社案内やパンフレットのように、企業理念や事業内容、製品の強みを体系的に伝えるツールは、“安心して判断できる材料”としての価値が高く、商談の信頼感を支える重要な要素となります。

一方で、タイ人との商談では、タイ語または英語での資料が基本となり、情報は視覚的にわかりやすく、スピーディーに伝わる構成が好まれます。このため、同じ印刷物であっても、言語・構成・デザインの最適化がターゲットによって求められるのがタイ市場の特徴です。

また、タイのビジネス文化では、対面の場で丁寧に資料を手渡すことが相手への敬意として受け止められるため、紙の資料を介したコミュニケーションが関係構築のきっかけとして作用することも少なくありません。特に日系企業同士では、「きちんと準備された資料があるかどうか」が信頼度に直結することも多く、“名刺代わりの会社案内”としての役割を果たします。

展示会や工場見学などの現場でも、紙という「持ち帰れる形」での情報提供が求められる場面は依然として多く存在しています。その場で読み切られなくても、存在感のある資料が手元に残ることで、後日WEBサイトや問い合わせフォームへと自然に誘導するきっかけになるという点でも、紙媒体は重要なタッチポイントです。相手の立場や言語、タイミングに応じて、WEBと紙をどう使い分けるか――それこそが、ローカルに根差した広報設計におけるカギとなります。

タイ日本人向けに有効なフリーペーパーの活用

また、在タイの日本人コミュニティに向けた情報発信では、日本語フリーペーパーへの広告出稿が有効です。

タイでは、駐在員を中心とした日本人社会が比較的コンパクトで情報の伝播が早く、紙媒体による情報共有の文化が根強く残っています。特にBtoB領域でも、日系企業同士の接点形成において、信頼性のある媒体に広告や記事が掲載されていることが、企業の“安心感”や“実在感”を裏付ける材料として機能します。

また、病院・レストラン・オフィスビル・日本人向け商業施設など、日本人が集まるスポットで物理的に手に取ってもらえる点も、WEB広告とは異なる大きな魅力です。さらに、特定業種に特化した特集企画やインタビュー記事と組み合わせれば、単なる広告以上の信頼構築・認知拡大の効果が期待できます。

グローバル顧客・海外の法人顧客向け

英語で統一されたコーポレートサイトや、プレゼン資料と連動したPDFパンフレットなど、簡潔かつ視覚的にわかりやすいツールが求められます。印刷物は要点を絞った資料を少数精鋭で用意し、WEBで詳細補完・商談化を促す設計が有効です。

このように、「印刷物で印象を深く残し、WEBで興味を引き続け、アクションにつなげる」という流れを意識することで、媒体の役割が明確になり、タイ市場でもブレない広報戦略を実現できます。

さらに、部署間で媒体活用の意図が共有されていると、営業・広報・マーケティングが一体となって効果を最大化しやすくなります。「紙かWEBか」ではなく、「相手の行動を促すために、紙とWEBをどう連携させるか」を発想の起点にしてみていただければと思います。

“紙で伝える”ことの意味を、もう一度

印刷物は単なる“資料”ではありません。そこには、企業の姿勢、丁寧さ、ものづくりへのこだわりが現れます。
WEBはスピーディーに広く情報を届けることが得意です。しかし、“信頼感”や“記憶に残る印象”を築くうえでは、紙媒体が果たす役割は依然として大きいのです。

特にタイ市場においては、デジタルと紙の両輪を使いこなすことが、現地の商習慣や文化に適応した広報・ブランディングの鍵となります。

弊社では、印刷媒体の企画・デザインはもちろん、WEBとの連携を意識したトータルなマーケティング施策のご提案も可能です。
在タイの日系企業様はもちろん、これからタイ市場への進出をお考えの企業様も、どうぞお気軽にご相談ください。

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