【SEO未来予測】AI登場で多様化する検索手段。SEOは複数導線設計で考える時代へ

【SEO未来予測】AI登場で多様化する検索手段。SEOは複数導線設計で考える時代へ

WEB担当者の方の中には、最近になって自社サイトのGoogle検索からの流入が減少傾向にあることを感じている方も少なくないのではないでしょうか。一方で、ChatGPTやPerplexityなどAI経由のアクセスが確実に伸びています。

これらは「検索経路が分散しはじめた」という兆候であり、今後のWEB運用に向けて捉え方を見直すタイミングにきているとも言えます。本記事では、Googleからの送客数低下の現象からAI検索増加の背景、ゼロクリック問題といったトレンドから、これからのSEOをどう設計すべきかを考察します。

Googleの送客力は緩やかに減少傾向に

調査会社 Statcounter のデータによると、2024年末から今年にかけて Google の世界検索シェアは 90%を下回る状況が続いています。長らく盤石だったGoogleのシェアに初めて揺らぎが見え始め、「Google一本で成り立ってきた検索構造に変化が生まれているのでは」という見方が現実味を帯び始めました。

さらに日本国内でも同様の兆候があり、2025年に報じられた調査では「過去2年間で Google経由のサイト訪問数が約3割減少した」とされています。このデータはPC・スマートフォン利用者のアクセス解析に基づくもので、従来の “検索 → サイト訪問” という導線が以前ほど強固ではなくなっている可能性を示しています。

弊社のクライアントデータを横断して見ても傾向は近く、Googleからの自然流入が前年と比較して緩やかに下がるケースが複数のサイトで見られます。業種や規模が違っても似たグラフになる点を考えると、これは一社の事情ではなく、市場全体が変わり始めている兆しと捉えるのが自然です。

これらのデータは一時的な揺れとは見なしにくく、検索流入の前提が変わり始めている段階にあるのかもしれません。

参考記事:
日本経済新聞:Google経由のサイト訪問、日本でも3割減 AI要約の浸透で
Search Engine Land:Google’s search market share drops below 90% for first time since 2015
Statcounter:Search Engine Market Share Worldwide.

キーワード検索とAI検索は、同じ検索でも役割がまったく違う

そんな中で、確実に伸びてきているのがAI検索によるアクセスです。
Google検索からの流入が緩やかに下がる一方で、AI経由の接触はわずかながらも確実に増えています。

以下のグラフは、ある企業の実際のアクセスデータを月次で分類したものです。
(Google・Bing・Yahoo・Other・AI Searchカテゴリで計測)

グラフを見ると、2024年まではAI検索経由の流入はほとんどなく、数字としてはごく小さな動きに留まっています。しかし2025年に入ると傾向が変わり、明確な立ち上がりが確認できます。月ごとの波はあるものの、流れとしては右肩方向です。全体のアクセス数に対する割合で言えばまだ数%ですが、前年まで存在しなかった導線が数字として可視化されてきたことは、今後の流入構造に変化が起きつつある兆しとみてよいでしょう。

こうした変化を読み解くうえで重要なのが、キーワード検索とAI検索は同じ「検索」という言葉で括られていても、ユーザーが求めている行動や体験が異なる点です。Google検索は今でも情報探索の出発点として強く、ユーザーはキーワードを入力し、複数のサイトを行き来しながら判断材料を集めます。情報を調べ、理解を深め、その先に意思決定があるという流れです。

一方、AI検索はその過程をまとめて短縮します。質問すれば回答が返り、整理された要点や推奨まで提示されることもあります。本来は段階的に進むはずの検索 → 比較 → 整理 → 判断という一連のプロセスが、ひとつのクエリに凝縮される体験です。

重要なのは、従来のキーワード検索が弱くなったわけではなく、「調べたい行動」と「すぐに答えが欲しい行動」が分かれはじめているという視点です。腰を据えて比較検討したいときは検索へ、最短で答えを得たいときはAIへ。行動が選択制になったことで導線は二層化し、Google流入は微減、AI流入は微増するという状況が生まれていることが考えられます。

こうした導線の分岐は、アクセスの発生そのものだけでなく、「成果の見え方」にも影響を与えはじめています。つまりSEOの成果の捉え方そのものが変わりつつあるとも言えます。

評価軸は順位のみで完結せず、AIが回答を生成する際に参照される情報かどうかも価値の一部になりはじめています。検索順位さえ上がれば流入が伸びるという直線的なモデルから、情報が利用されること自体を成果として扱う必要が出てきた。今まさにその転換期に立っているともいえるでしょう。

ゼロクリック時代における成果指標の変化

こうした導線の二層化が進む中で、特に象徴的な現象として語られるのがゼロクリック問題です。検索結果に触れただけで疑問が解決し、サイトへ訪問する必要がなくなるケースが増えていると指摘されています。流入は減っているのに、情報だけは利用されている。この状況は、従来のSEOには存在しなかった矛盾として受け止められつつあります。

その構造をわかりやすく示す例が、Googleが導入した AI Overviews(旧SGE) です。検索画面の先頭でAIが回答を生成し、複数のページの内容が要約された形で表示されます。本来ならユーザーは複数サイトを比較して答えに近づいていましたが、AI Overviewsが提示される検索では、ページを開かずに概要・推奨・注意点まで把握できてしまうことがあります。つまり、情報の消費とアクセスが結びつかなくなりつつあるということです。

Google検索に表示されたAI Overviews。要点が冒頭で要約されるため、リンクを開かずに解決するケースが生まれ、クリック流入が起きにくくなる点が特徴。

この変化が示しているのは、検索導線の価値が「クリックに現れないケースが増えている」という現実です。AI Overviewsに引用されることが、企業にとって即メリットになるとは限りません。回答の根拠に情報が使われても、ユーザーの画面に企業名が表示されない場合も多く、ブランド認知や流入に直結しない可能性があります。むしろ「役立っているのに成果として見えない」というジレンマが強まるとも言えます。

だからこそ、ゼロクリックが増える環境では、従来のSEO指標だけでは評価が難しくなります。
PV・自然検索流入・クリック数だけで成果を判断しようとすると、実際に情報が使われているのかどうかが把握できない。数字上は下がっていても、水面下で「情報が参照されている」可能性はあり、そこで価値が生まれているかどうかが測れない。この見えにくさこそが、今のSEOの難しさです。

つまり、これからのSEOに求められるのは

クリックで測るSEOから、参照・利用まで含めて成果を捉えるSEOへ

という方向性です。KPIの定義をアップデートしていく必要があるとも言えます。

AI検索で伸びている企業サイトの共通点

AI検索経由の流入が伸びている企業のアクセスデータで追っていくと、共通して3つの特徴が浮かびます。どれも小手先のテクニックではなく、検索環境が二層化する前から積み重ねてきた“土台”が成果として回収されている形に近いです。

 1. コンテンツ量(ページ数・記事数)が多い

AIは、ネット上に蓄積された大量のテキストから関連する論点を抽出し、回答を生成します。この仕組みを踏まえると、参照できる情報が限られるサイトは生成段階で取り上げられる機会が少なくなる可能性があります。反対に、記事やナレッジ、事例、FAQなどが継続的に蓄積されているサイトでは、AIが参照できる文脈が多面的になり、結果として接触が発生しやすい状況につながると考えられます。

単体の情報が評価されるケースもありますが、AI経由のリーチを広げるという観点では、情報が数と文脈の両面で積み上がっているサイトの方が候補に上がる余地が生まれる可能性があります。現時点では推測の域を出ないものの、AI検索に備える取り組みとして意識すべき視点といえるでしょう。

2. ブログやオウンドメディアが継続されている

AI検索で存在感を持つ企業サイトには、情報の品質に加えて、継続的に更新が行われているという共通点が見られます。統計的に明確な裏付けがあるとは言えませんが、複数社のデータ観測や運用現場の感触として、一定の相関がうかがえます。

単発で良質な情報が参照されることもありますが、FAQ、HowTo、比較、課題整理といった異なる文脈の記事が継続的に増えていくサイトでは、情報が層のように積み上がり、AIが参照できる切り口が増えることで候補に挙がる余地が広がります。さらに情報が一定の鮮度を保ち続けている場合、内容が時流に合った形で維持されるため、AIが参照対象として扱う余地が広がる可能性もあります。

つまり現段階で言えるのは、「品質の高い情報が継続的に蓄積され、必要に応じて更新されている状態」は、AI検索において有利に働き得るということです。確実な定量証明はないものの、実務上検討すべき視点だといえます。

 3. 権威性 × ブランド想起が備わっている

E-E-A-T(専門性・権威性・信頼性)に加えて、指名検索の発生や業界内での認知、露出の蓄積がある企業は、AIが参照対象として扱う可能性が高まると考えられます。AIは回答の根拠として信頼性の高い情報源を優先しやすく、専門性が支える権威性と、名前が想起されやすい状態の両方が揃っているサイトは、引用候補として扱われる余地が生まれます。現段階では観測に基づく推測ではあるものの、AI検索に対応する上で意識すべき要素と言えるでしょう。

これら3つのポイントに共通するのは、短期的なSEOテクニックではなく、時間をかけて蓄積された情報と信頼が基盤になっているということです。AI検索で露出が伸びている企業は偶然拾われたわけではなく、コンテンツ量・文脈性・E-E-A-T・認知の蓄積といった複数要素の掛け合わせによって結果が現れていると考えられます。
SEOとAI検索は別物のように見えますが、現状の観測からは、どちらも「信頼できる情報が蓄積されているサイト」を評価しやすいという共通点がありそうです。

これからのSEOで意識しておきたい3つの視点

AI検索が回答を先に提示する構造が広がると、検索結果の画面内で疑問が解決し、ページへ遷移せずに情報が消費されるケースも見られるようになります。こうした状況では、SEOの成果を検索順位やPVだけで判断することは、すでに難しくなりつつあります。
では、この環境変化に対し企業はどう戦略を組むべきか。現時点の観測と検索UIの変化を踏まえると、以下の3つが今後の方向性として検討に値します。個別施策に走る前に、この前提設計を共有しておくことが重要です。

 1. Googleだけでなく複数導線を前提に設計する

検索流入は今後も基盤であり続けますが、それ一本では成果を測れません。Googleに最適化しながらも、Bing・AI・SNS・外部引用といった別経路にも情報が届く状態を設計することが必要になります。
ポイントは「Googleが弱るから他へ移る」ではなく、流入の“入口が複線化する未来”を前提にすることです。

 2. 読まれるコンテンツではなく“引用されるコンテンツ”へ

SEOはこれまで「読まれること=成果」とされがちでしたが、AI検索では 引用される・参照される・入口として認識される といった価値が生まれます。
クリックされなくても回答生成に使われたり、逆にAIが入口となって訪問に繋がるケースもあるため、成果はPVだけでは測れません。

一次情報、定義、判断基準、事例、FAQなどの「再利用されやすい知識」は、AI回答の材料になりやすいと考えられます。今後は閲覧数を稼ぐだけでなく、情報として利用される強さを持つコンテンツ設計が重要になる可能性があります。

 3. KPIをアクセスから影響へ切り替える

これまでSEOは検索順位やPVの増減によって成果が判断されることが多く、評価軸は比較的シンプルでした。しかしAI検索の普及により、クリックを介さず理解や検討が進む場面も生まれており、成果をPVだけで測る設計では接触の実態を捉えきれません。

今後は成果を「どれだけ影響を与えたか」で捉える視点が求められます。たとえば、

・ブランド名で検索される回数(指名検索)
・検討フェーズまで到達しているか(セッション品質)
・再訪率・滞在時間・回遊の深さなどの行動の質
・問い合わせや認知の変化に繋がった痕跡
・AI回答の引用元として扱われている可能性

こうした指標を複合的に見ていくことで、PVに表れにくい価値や貢献を評価できます。検索順位やアクセス数は重要な要素のひとつですが、それだけが成果ではなくなる。「見られた」だけでなく「使われた」「判断に影響した」状態を成果と捉える発想への転換が必要です。

まとめ

Google検索はこれからも主要な流入源であり続ける一方で、AI検索という別ルートも確実に存在感を強めています。流入の変化はSEOの終わりではなく、経路が分岐しているという捉え方のほうが現実的に思えます。順位とPVだけで成果を測ることは難しくなり、接触・参照・意思決定への影響といった評価軸が求められる場面も増えていくでしょう。

SEOは今後ますます多層化し、見るべきメトリクスも対策も複雑になっていくと思われます。一方で、上質な情報を継続的に蓄積していくという軸は変わらないのではと考えます。
AI検索に拾われるためにも、Googleに評価されるためにも、そして最終的に誰かの意思決定に寄与するためにも、コンテンツという土台の強さは避けて通れません。

急激に舵を切る必要はなく、これまで続けてきたSEOを土台にしながら、情報がGoogleでもAIでも届く状態をつくる。その“両輪で走れるサイト”こそ、検索が変わっても揺れずに進めるのではないでしょうか。

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著者

松本 洋一郎e-bird(Thailand)Co.,Ltd. Managing Director / WEBディレクター

WEBディレクターとして多数のWEBサイト制作に従事。マーケティングの知見を基盤に、コンテンツの企画・設計やSEOを考慮したライティングまで幅広く対応している。

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