生成AIを使った記事ライティングで気をつけるべきこと

生成AIを使った記事ライティングで気をつけるべきこと

企業のWEB担当者の間でも、自社のブログやオウンドメディアの記事制作に生成AIを取り入れるケースが増えつつあります。構成案づくりや初稿生成、表現の調整など、AIの活用場面は年々広がっています。

一方で、便利さだけを理由にAIに頼りすぎると、誤情報の混入や文章の均質化、責任の所在が曖昧になるなど、注意すべきポイントも生まれます。本記事では、生成AIを活用して記事を書く際に意識しておきたいポイントを、実務の観点から整理します。

生成AIを記事制作に使う際に理解しておきたい前提

生成AIは、アイデア出しや構成の整理、文章の下書きといった初期工程を素早く進められるため、書き始めるまでの負担を軽くしてくれる心強いツールです。特に「まずは形を作る」という段階においては、大きな助けになります。

ただし、便利である一方で常に最終稿のクオリティまで自動で仕上げてくれるわけではありません。AIは自然な文章を生成する力は持っていますが、情報の正確性や文脈の深さ、内容の妥当性まで保証してくれるわけではなく、読みやすい形であっても中身が薄いままになってしまう可能性があります。

こうした特性を理解せずに使うと、期待とは違う方向に文章が進んでしまったり、気づかぬまま誤情報を含んだまま公開してしまう可能性もあります。特にAIは文章の体裁を整えることに長けているため、自然に読めてしまう分だけ、違和感や齟齬を見落としやすい点には注意が必要です。

例えば次のような事象が起こりやすくなります。

“もっともらしいが不正確”という情報が紛れ込む可能性がある
(表現が自然なため、一見すると真実のように見えてしまう)

一般論に寄りやすく、記事としての独自性が薄まりやすい
(AIは過去データの平均値を返すため、尖った視点が出にくい)

背景や根拠が曖昧なまま、情報が断定的に表現されることがある
(語尾が自信満々なため、判断を誤誘導しやすい)

担当者ごとにAIへの依存度や使い方が異なる結果、記事の方向性に差が出やすくなる
(ルールがないと、文体や深度がバラつく)

また近年、「AIで書いた記事はSEOで評価されないのでは?」という声も聞かれます。しかし検索エンジンが重視しているのは、AIが書いたかどうかではなく、ユーザーにとって有益で独自性のある情報かどうかです。つまり生成AIの利用自体は評価のマイナスにはなりませんが、一般論の羅列や根拠の曖昧な記事では、価値を感じてもらえず評価されにくいという点に注意が必要です。

つまり重要なのは、「AIを使うか使わないか」ではなく、どんな前提を持って使うかです。
AIの力を最大限に活かすには「何を任せ、どこを人間が判断すべきか」を見極める視点が必要になります。次に、その注意点を具体的に整理していきます。

【注意点①】AIの文章がすべて“正解”だと思わないこと

生成AIは、ときに根拠の不十分な情報を、あたかも確かな事実であるかのように整った文章として提示することがあります。いわゆる「ハルシネーション」と呼ばれる現象で、これはAIが意図的に虚偽を述べているわけではなく、学習データから最も自然だと推測される表現を生成する過程で生じる現象です。

AIは「最も自然に見える文章パターン」を推測して生成しています。そのため、

・根拠が曖昧でも文章として成立してしまう
・不確実な情報も断定的な口調で返してくる

という状況が起こりやすいのです。

さらに、AIは膨大なデータから“平均的な答え”を導き出すため、情報の整合性や最新性を判断する力は持っていません。

そのため、次のような領域では誤りが生じやすくなります。

・技術仕様(プロダクトの世代違い、機能の旧情報)
・法令・制度(改正後の内容を反映していない)
・統計データ(出典が曖昧なまま数値化される)
・固有名詞(企業名・人名・地名)(スペル違い・存在しない名称)
・年代や日付(整合性の取れないストーリーが生成される)

AIは“文章の正しさ”ではなく、“文章として自然かどうか”を基準に生成するため、「もっともらしいが不正確」という内容が混ざってしまうのです。

そのため、AIが出した文章を“正解”として扱うのではなく、最初の叩き台・素材として受け取り、人間側が内容の正否を判断するという姿勢が不可欠になります

この前提を理解しておくだけで、AI活用の質が大きく変わります。

【注意点②】「事実」と「主観」を書き分ける

AIライティングで特に混ざりやすいのが、「事実(Fact)」と「主観(Opinion / Interpretation)」の境界です。
文章はスムーズに読めてしまうため、一見すると全てが正しい情報のように思えますが、実際には裏付けのある事実と、解釈・印象・推測といった主観が同じトーンで混在しているケースが少なくありません。この区別が曖昧な状態で公開されると、読者の誤解を招き、情報の信頼性にも影響します。

● 事実(Fact)とは

外部の一次情報で裏取りでき、確認すれば真偽を判断できる情報です。
統計データ、制度や法律の内容、製品仕様、企業情報、日時などが対象に含まれます。とくに数字・日付・固有名詞は誤りがあると信頼を損なうため、扱いには注意が必要です。

● 主観(Opinion/Interpretation)とは

根拠がなく、書き手の経験や考察、感情に基づく内容です。
「〜と考えられる」「〜の可能性がある」「〜と感じる場面が多い」といった表現がこれにあたり、事実とは異なる扱いになります。ただし主観は悪ではなく、むしろ体験談や観察視点を加えることで記事に深みや独自性が生まれます。

記事の品質を高めるためには、事実と主観を明確に書き分ける姿勢が欠かせません。事実は一次情報や公式情報に基づき正確に示し、主観を述べる際は「可能性がある」「〜と感じる」など、見解であると分かる表現にします。たとえば「今後市場は拡大する」と断言するより、「今後市場は拡大する可能性がある」「現場の感覚では需要が伸びている印象がある」と書くと、読者にとって事実と意見の境界が明確になります。

生成AIは文章を自然に整えることに優れていますが、その自然さゆえに推測が事実のように混ざりやすい傾向があります。根拠が曖昧なまま断定的な文脈で提示されることもあり、読み手が誤情報として受け取ってしまう可能性があります。

AIが生成した文章を扱う際は、どこまでが裏付けのある事実で、どこからが推論なのかを意識してチェックする必要があります。最終的な判断に人の編集が介在することで、情報の正確性と信頼性を保つことができます

【注意点③】一次情報のチェック

AIはインターネット上に蓄積された既存テキストをもとに文章を生成しています。そのため、最新の制度改訂や製品アップデート、統計の更新といった最新の正確な情報までは反映されていないことが多く、過去の記述をそのまま引用してしまうケースも珍しくありません。

さらに、複数の情報を混ぜ合わせてAIが「それらしい説明」を作ってしまうこともあり、文章の自然さに気を取られて読み手が誤情報に気づけない可能性があります。

だからこそ、AIが生成した内容を記事として公開する前には、必ず一次情報(最も信頼できる情報源)を確認することが欠かせません。とりわけ、次の領域は誤りが出やすいため、AIの文章をそのまま採用せずソースを照合してください。

法令・ガイドライン → 各省庁・公的機関の公式サイト、官報
統計データ・数字 → 国勢調査、学術データベース、国際機関など
製品仕様・スペック → メーカー公式ドキュメント、リリースノート
価格・プラン → 最新のプレスリリース、公式サイト、販売ページ

特に製品紹介や制度解説記事では、「前年情報のまま」「旧仕様のまま」「存在しない制度を混ぜて説明している」などの齟齬が生まれることがあり、後から修正が必要になる場合もあります。

検索エンジンは一次情報に基づいた正確な情報かどうかを重視するため、ここを怠るとSEOにも影響が出ます。

また、企業ブログやコラムは単なる情報発信ではなく、ブランドの信頼性を支える資産です。誤った情報を基に記事が公開されると、後から訂正しても読者からの信用回復には時間がかかります。AIが生成した言い回しが自然だからといって安心せず、「事実の裏付けがあるか?」という視点での確認を習慣にすることが重要です。

【注意点④】AI特有の“きれいすぎる文章”をそのままにしない

生成AIは文法的に整った文章を作るのが得意です。そのため、一見するとまとまりのある文章に見えますが、じっくり読むと情報の深さが不足していたり、読み手にとって“刺さらない”内容になっていることも少なくありません。

これはAIが過去のテキストを横断的に学習し、もっとも一般的で自然な表現を予測して出力する仕組みによるものです。言い換えれば、平均値の文章はつくれても、尖った視点や感情を伴う文脈は生まれにくいのです。

具体的には次のような特徴がよく見られます。

読みやすいが当たり障りがない
→ 誰が読んでも否定しづらい内容だが、強い印象が残らない

似た表現が繰り返される
→ 説得力より語数が増える方向に働き、冗長になりがち

結論がぼやける
→ 曖昧な言い回しで、何が言いたいのか少し掴みにくい

具体的な数字・事例がない
→ 実践に落とし込みにくく、ノウハウとして弱く見える

主語と述語が遠く、やや硬い構造になる
→ 形式的で説明調の文章に寄るため、熱量や体験が伝わりにくい

このまま公開すると、どこかで読んだような一般論に近づいてしまい、企業ブログとしての独自性を出しにくくなります。言い換えると、「読めるが記憶に残らない記事」になりやすいということです。

AIがつくった文章を下地として受け取り、人間が具体例や数値、自社ならではの視点を加えながら編集を行うことで、はじめて独自性と価値が生まれます。

【注意点⑤】AI利用ルールをチーム内で揃える

生成AIは便利な一方、担当者によって活用の深度や判断基準が異なります。

ある人は「構成案までしか使わない」、別の人は「下書き丸ごと生成してから微修正で公開する」、また別の人は「ほとんど手を加えずアップする」といった具合に、運用が個人の感覚に依存しやすいのが実情です。

このバラつきは、記事の品質やトーン&マナーの不一致、責任範囲の曖昧化につながり、最終的にはブランドの信用にも影響します。

そこで重要になるのが、チーム内でのAI利用ルールの明文化です。細かすぎるルールは創造性を阻害しますが、最低限共有しておく指針があるだけで、判断が揃い、品質が安定します。特に以下の点は、事前に決めておく価値があります。

例:ルール化すると良い項目

機密情報は入力しない(顧客名・未公開情報など)
→ 情報漏えいリスクを最小化する

AI生成文を使う範囲(構成案のみ/初稿まで/見出しだけ等)
→ “どこまでAIを任せるか”を揃え、品質差の発生を防ぐ

公開前に必ず人間がチェックする
→ 事実確認・トーン調整・独自性の付与を担保する

誤情報が発覚した際の修正フローを整備
→ 誰が修正し、再発防止の共有まで行うかを明確に

画像生成を使うか/使う場合の権利確認方法
→ 著作権・モデル権の問題を回避

引用・出典の扱いと記載ルールを決める
→ 一次情報の裏取りと、表記ゆれ防止に役立つ

これらはほんの一例ですが、「最低限これだけは守る」というラインを共有することで、チームメンバーの判断が揃い、作業効率だけでなく情報の再現性・品質の均質化・公開フローの安全性が格段に上がります。

記事の独自性は“切り口”で生まれる

AIが生成する文章が「どこかで読んだことがある気がする」と感じられやすい理由は、AIが膨大な学習データから平均的にもっともらしい“一般解”を導いてしまう設計にあります。

つまり、AIに書かせただけの文章は、自然で整っていても「同じテーマを調べれば似た内容がいくつも見つかる」状態になりやすいということです。そのため、生成AIを使う場面が増えるほど、記事の価値は「どの視点で語るか」という切り口に左右されやすくなります

切り口とは 「同じテーマでも、どの視点で語るのかを決める編集の設計」 のことです。
テーマは同じでも、切り口次第でまったく別の記事になります。

例えば、

誰に向けて書くのか
→ 経営者 / 現場エンジニア / BtoB企業 など

どんな課題を解決するための記事か
→ 工数削減、品質担保、SEO対策、教育・引き継ぎ など

どの角度で語るか
→ 失敗事例、成功の型、比較、数字で示す、現場の声ベース 等

というわずかな違いだけで、ユーザーにとっての価値も印象も大きく変わります。

生成AIは情報を取りまとめ文章に整えることは得意ですが、どの情報を残し、どこを深掘りし、どの順番で提示すべきかといった判断はAIには難しい領域です。読者が求めている観点を見極め、専門性や現場感をどこまで盛り込むか、また主張に説得力を持たせるためにどの事例や数字を添えるべきかといった編集判断は、人間にしかできません。

記事の方向性を決めるセンス、論点の焦点を定める目、文章の温度や語感を調整する感覚は、人の経験や視座に依存します。だからこそ、生成AIが普及するほど、ただ書く能力よりも情報の取捨選択を行い、深度や構成、視点を設計できる“編集者としての力”が差別化の源泉になります。

まとめ

生成AIは、記事制作を短時間で前に進める強力なツールです。構成案を作り、文章のたたき台を整え、表現の候補を提案してくれる。うまく使えば執筆の初速は大きく上がり、制作フローは驚くほど滑らかになります。しかし同時に、誤情報の混在や文章の均質化、独自性の弱まりが起こりやすいのもまた事実です。

AIで生成された文章は「完成品」ではなく「始まり」に過ぎません。AIに書かせた文章を素材として受け取り、事実を確認し、不要なふくらみを削り、必要なエピソードや自社視点を足し、読み手に届く形へと整える。この工程にこそ、人が関わる意味があります。

そして何より大切なのは、最終的にその文章は“読者にとって面白いか・役に立つか”という視点で判断する人間の目です。AIは文章を作れますが、「読む価値があるか」「他の記事では得られない発見があるか」という問いには答えられません。それを見極めるのは、経験や現場感を持つ書き手・編集者の感性です。

生成AIが普及した今、問われるのは“書けるかどうか”ではなく、どんな視点で、どんな価値を届けるかを設計できるか。AIと人間が役割を分担し、効率と質のバランスを取りながら使いこなせれば、コンテンツ制作はさらに進化していくことでしょう。

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著者

松本 洋一郎e-bird(Thailand)Co.,Ltd. Managing Director / WEBディレクター

WEBディレクターとして多数のWEBサイト制作に従事。マーケティングの知見を基盤に、コンテンツの企画・設計やSEOを考慮したライティングまで幅広く対応している。

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