WEB改善はどこから考えるべきか。WEB担当者が押さえておきたい基本の整理法

WEB改善はどこから考えるべきか。WEB担当者が押さえておきたい基本の整理法

企業のWEB担当者としてサイト運用に関わっていると、「改善」という言葉が日常的に使われる一方で、実際にどこから手をつけるべきか判断に迷う場面は少なくありません。数値を見れば課題があることは分かるものの、その数字が何を示しているのか、次にどのようなアクションにつなげるべきなのかが曖昧なまま、対応が後回しになってしまうケースも多いのではないでしょうか。

WEB改善が難しく感じられる理由の一つは、成果指標そのものを出発点にしてしまうことにあります。たとえば「CVRが低い」「問い合わせが増えない」といった状態は、すでに起きている結果であり、改善の方向性を直接示してくれるものではありません。本来見るべきなのは、その結果に至るまでのユーザーの行動や滞留ポイントです。

本記事では、WEB改善を感覚や経験則に頼らず、担当者として再現性を持って判断するための考え方を整理します。特別な分析スキルや高度なツールを前提とせず、ユーザー行動を三つの視点から捉えることで、改善の着手点を明確にすることを目的としています。運用や制作の現場で、施策の優先順位を整理したいと考えている方にとって、一つの整理軸として活用できる内容になれば幸いです。

改善の出発点はユーザー行動の把握から

WEB改善の検討は、「CVRが低い」「成果が思うように伸びていない」といった指標から始まるのが一般的ですし、それ自体はごく自然なことです。成果指標は、改善に着手すべきかどうかを判断するための、重要で客観的な出発点でもあります。

ただし、施策を考える段階では、その指標をそのまま原因として扱わないことが重要になります。CVRや成果数は、最終的に起きている結果を示しているにすぎず、なぜその結果に至っているのかまでは教えてくれません。施策の精度を高めるためには、その指標を生み出している過程、すなわちユーザーの行動に視点を移す必要があります。

たとえばCVRが低い場合でも、その背景は一様ではありません。ページの途中で離脱しているのか、CTAまでは到達しているがクリックされていないのか、あるいはクリック後の入力プロセスで止まっているのかによって、課題の性質も打ち手も大きく変わります。結果の数字だけを見ていると、これらの違いは見えにくくなります。

成果指標は、問題の存在を知らせる「合図」として捉えると整理しやすくなります。その合図を受け取った後は、どの行動の段階で滞留や離脱が起きているのかを一つずつ確認し、原因を切り分けていく。このプロセスを踏むことで、改善施策は感覚的な対応ではなく、根拠を持った判断として組み立てられるようになります。

WEB改善を整理する3つの視点

多くのWEBサイトの課題は、次の3つのいずれかに分類できます。

1. 導線の課題

必要な情報やCTAに到達していない状態

導線の課題とは、ユーザーが本来取ってほしい行動に至る前に、情報の流れが途切れてしまっている状態を指します。ここで言う導線は、リンクの配置やボタンの位置といった狭い意味ではなく、ページ全体の情報の並び方や、読み進める際の負荷を含めた広い概念です。

この課題が発生している場合、コンテンツの内容そのものが評価される前に、ユーザーの行動が止まっています。つまり、訴求や表現以前の問題として、そもそも必要な情報に届いていない可能性があります。

代表的なのは、ページの途中で多くのユーザーが離脱しているケースです。スクロール到達率が低く、重要なセクションやCTAが表示される位置まで到達していない場合、どれだけ適切な訴求を用意していても効果は限定的になります。この段階でコピーやデザインを改善しても、改善の影響範囲は狭くなりがちです。

導線の課題を検討する際に重要なのは、「ユーザーがどこまで進んでいるか」を冷静に確認することです。どの深度で離脱が増えているのか、どのセクションで滞留が発生しているのかを把握することで、情報量が多すぎないか、前提説明が長くなりすぎていないかといった構造上の問題が見えてきます。

このタイプの課題に対しては、新しい要素を追加するよりも、既存要素の整理や再配置が有効な場合が多くあります。情報の順序を入れ替える、前段の説明を簡潔にする、CTAをより早い段階で提示するなど、構造を調整することで、ユーザーが迷わず次の行動に進める状態を作ることが目的になります。

導線の改善は、ファネルの上流に位置するため、改善効果が広範囲に波及しやすいという特徴があります。その一方で、課題を見誤ると「とりあえず目立たせる」「要素を増やす」といった方向に進みやすいため、まずは行動データをもとに、どこで流れが滞っているのかを見極めることが欠かせません。

情報や導線が整理されていないと、ユーザーは目的地にたどり着く前に立ち止まってしまいます。コンテンツの内容以前に、必要な情報やCTAまで無理なく進める構造になっているかを確認することが重要です。

2. 訴求の課題

到達はしているが、行動につながっていない状態

訴求の課題は、ユーザーがCTAの表示位置や重要な情報には到達しているものの、そこで期待している行動が起きていない状態を指します。導線の課題と異なり、この段階ではページ構造そのものは大きな問題ではなく、提示している内容がユーザーの関心や期待と十分に噛み合っていない可能性が高くなります。

代表的な兆候としては、CTA到達率は一定水準にあるにもかかわらず、クリック率が低いケースが挙げられます。ユーザーは「見るところまでは来ている」が、「今すぐ行動する理由」を見出せていない状態と言えます。

このときに重要なのは、CTA単体の文言や色だけに目を向けないことです。実際には、その直前に配置されている見出しや説明文、ベネフィットの示し方が、行動判断に大きく影響しています。ユーザーはCTAを押す直前までに、その行動に見合う価値があるかを無意識に判断しています。

訴求の課題を整理する際には、「誰に向けて」「何を提供し」「どのようなメリットがあるのか」が明確に伝わっているかを確認する必要があります。自社にとっては当たり前の価値であっても、初めて訪れるユーザーにとっては判断材料が不足していることも少なくありません。

このタイプの課題に対しては、大規模な改修よりも、訴求軸を限定した検証が有効です。見出しやベネフィット表現を差し替える、伝える順序を調整するなど、影響範囲を絞った変更によって、どの表現が行動につながるのかを確認します。一度に複数の要素を変更すると、改善要因が特定できなくなるため注意が必要です。

訴求の改善は、導線が一定程度機能していることを前提に成立します。そのため、到達率が十分でない段階で訴求だけを調整しても、期待した効果は得られません。まずは「見られている状態」であることを確認した上で、行動を阻んでいる要因がどこにあるのかを丁寧に切り分けていくことが重要です。

情報や選択肢は提示されているものの、判断に至らず行動が起きていない状態です。価値やメリットが十分に伝わっているか、ユーザーの視点で再確認する必要があります。

3. 納得・不安の課題

行動は起きているが、完了まで至っていない状態

納得・不安の課題は、CTAクリックなどの行動は発生しているものの、最終的な完了に結びついていない状態を指します。導線や訴求と異なり、この段階ではユーザーはすでに一定の関心を持ち、行動を起こす意思を示しています。それにもかかわらず完了しない場合、操作性や心理的な不安といった、より具体的な障壁が存在している可能性が高くなります。

典型的なのは、フォーム入力途中での離脱が多いケースです。入力項目が多い、内容が分かりづらい、入力ミスが起きやすいなど、実務的な負荷が高いと、途中で離脱が発生しやすくなります。また、なぜその情報が必要なのかが十分に説明されていない場合、慎重なユーザーほど手続きを中断する傾向があります。

この課題は、数値上は「クリックはされているのに成果が出ない」という形で現れるため、見落とされやすい点にも注意が必要です。訴求や導線の改善を続けているにもかかわらず成果が伸びない場合、原因がこの段階にある可能性を疑う必要があります。

理解の課題を検討する際には、ユーザーがどの項目で止まっているのか、どの操作でエラーが発生しているのか、完了までにどの程度の時間がかかっているのかといった、より詳細な行動データを確認することが重要です。ここでは「どれだけ見られたか」よりも、「どこで不安や負担が生じているか」という視点が求められます。

このタイプの課題に対しては、新しい要素を追加するよりも、負担を減らす方向での改善が有効です。入力項目を見直す、補足説明を追加する、安心材料を分かりやすい位置に配置するなど、ユーザーが迷わず完了できる状態を整えることが目的になります。

理解の改善は、ファネルの最下流に位置するため、影響範囲は限定的に見えがちです。しかし、ここでの離脱率が高い場合、上流での改善効果が正しく反映されないことも少なくありません。導線や訴求の改善と並行して、この段階の障壁を取り除くことが、成果を安定させるためには欠かせない要素となります。

行動の意思はあるものの、最終的な完了に踏み切れない場合、操作の分かりづらさや心理的な不安が障壁になっている可能性があります。最後の判断を妨げている要因を丁寧に取り除くことが重要です。

初期改善では、まず既存要素を見直しからが効率的

WEB改善というと、デザインの刷新やコピーの書き直しといった大きな変更を思い浮かべる方も多いかもしれません。実際、課題の性質によっては、そうした抜本的な刷新が有効なケースも少なくありません。ただし、改善の初期段階においては、いきなり大きな変更に踏み込む前に、現状を整理することが重要になります。

その理由の一つは、変更点が多くなるほど、成果に影響した要因を把握しにくくなるためです。コピーやビジュアル、構成を同時に作り替えてしまうと、結果が改善したとしても、どの要素が寄与したのかを説明することが難しくなります。これは次の判断や、将来的なリニューアルの精度を高める上での判断材料を失うことにもつながります。

改善の初期段階でまず確認したいのは、新しい要素を足すべきかどうかではなく、既存の要素が適切に機能しているかという点です。情報の順序は適切か、重要な要素は十分に視認できる位置にあるか、ユーザーが判断に必要とする情報が行動の直前に提示されているか。こうした構造面を整理するだけでも、ユーザーの行動が変化することは珍しくありません。

また、既存構成を活かした改善は、実装コストや関係者調整の負荷を抑えながら検証を進められるという利点もあります。

こうした検証を通じて、「構造や配置で解決できる課題」と「表現や素材そのものを見直すべき課題」が切り分けられると、リニューアルが必要な場合でも、その目的や範囲を明確に定義することができます。改善を進める際は、まず既存構成の中で調整できる余地を確認し、その上で必要に応じて刷新を検討する。この順序を意識することで、改善とリニューアルの双方が、より効果的な形で運用に組み込まれていきます。

施策の優先順位を決める視点

改善案を検討していくと、少なからず複数の施策候補が挙がります。導線、訴求、理解のいずれにも課題が見つかる場合、どこから手をつけるべきか判断に迷うこともあるでしょう。このとき重要なのは、施策の良し悪しを感覚で比べるのではなく、共通の判断軸で整理することです。

まず考えたいのは、その施策が現実的に実行できるかどうかです。改修内容が大きく、関係者調整や承認に時間がかかる施策は、理論上効果が高く見えても、実行に至らなければ意味を持ちません。限られたリソースの中で運用を回していく以上、短期間で実装できる施策を優先する判断は、実務上きわめて合理的です。

次に確認すべきなのは、施策の影響範囲です。改善がどの行動段階に作用するのかによって、効果の広がり方は大きく異なります。ページ構造や情報配置といった上流の改善は、多くのユーザーに影響する可能性があります。一方で、入力項目の微調整など下流の改善は、影響範囲は限定的でも、成果を安定させる役割を担います。どちらが正解ということではなく、現在の課題がどの段階に集中しているかを踏まえて判断することが重要です。

さらに、改善を継続的に回せるかどうかも、優先順位を決める上で欠かせない視点です。一度きりの大きな改修よりも、検証と修正を繰り返せる施策の方が、長期的には成果につながりやすくなります。審査や確認に過度な負荷がかからない施策は、改善のサイクルを止めにくいという点で価値があります。

これらの視点を踏まえると、初期改善では「実行しやすく、影響範囲が明確で、継続しやすい施策」を優先するのが現実的です。派手さはなくても、検証可能な改善を積み重ねることで、判断の精度は徐々に高まり、より踏み込んだ施策にも取り組みやすくなります。

優先順位を明確にすることは、単に作業順を決めるためではありません。関係者と共通認識を持ち、改善の意図と狙いを説明できる状態を作ることにもつながります。その意味で、優先順位づけは改善そのものと同じくらい重要なプロセスと言えるでしょう。

よくある改善の停滞要因

WEB改善が思うように進まなくなる背景には、特定の技術的な問題よりも、判断や進め方の段階で生じるズレが影響していることが少なくありません。改善を継続するためには、こうした停滞要因をあらかじめ意識しておくことが重要です。

一つ目は、指標を単独で評価してしまうことです。クリック率やCVRといった数値は分かりやすい一方で、それだけを見て判断すると、他の指標との関係性が見えなくなります。たとえばクリック率は改善しているのに、最終成果が伸びていない場合、どこか別の段階で摩擦が生じている可能性があります。数値は常に行動の流れの中で捉える必要があります。

次に多いのが、複数の要素を同時に変更してしまうケースです。導線、訴求、表現を一度に手直しすると、結果が変化したとしても、その要因を説明できなくなります。これは改善が進んでいるように見えて、実際には判断材料が蓄積されていない状態です。検証という観点では、変更点を限定することが欠かせません。

また、施策の目的や判定基準が曖昧なまま進めてしまうことも、停滞の原因になります。何を改善したいのか、どの数値がどの程度変われば成功と判断するのかが共有されていないと、結果の評価が主観的になりやすくなります。その結果、改善が「やったかどうか」の話に終始し、次の判断につながりません。

さらに、短期的な数値変動に過度に反応してしまう点にも注意が必要です。日次や週次の変化だけで判断すると、季節要因や一時的な流入変動に引きずられやすくなります。改善の効果を正しく評価するためには、一定期間の推移を踏まえた冷静な判断が求められます。

改善が停滞する場面では、「何をすべきかが分からない」のではなく、「何を基準に判断すべきかが整理されていない」ことが多くあります。判断軸を明確にし、検証可能な形で施策を積み重ねていくことが、改善を前進させるための最も確実な方法と言えるでしょう。

まとめ

WEB改善は、特別な発想力や高度な分析スキルがなければ進められないものではありません。重要なのは、どこを見るか、どの順番で考えるかを整理し、判断を構造化することです。

成果指標は、改善に着手すべきかどうかを判断するための出発点として欠かせません。ただし、施策を検討する段階では、その指標を生み出しているユーザー行動に視点を移し、導線、訴求、理解のどこに課題があるのかを切り分けて考える必要があります。この切り分けができるだけで、改善の議論は具体性を持ち始めます。

また、改善の初期段階では、大きく作り替えることよりも、既存要素の整理や再配置といった実行可能な施策を優先する方が、検証の精度を高めやすくなります。施策の優先順位を明確にし、判断基準を共有することで、改善は属人的な対応ではなく、継続的な運用プロセスとして定着していきます。

WEB改善が停滞する多くのケースは、施策の良し悪し以前に、判断軸が曖昧なまま進めてしまうことに原因があります。何を改善したいのか、どの変化をもって成功とするのかを言語化し、検証可能な形で積み重ねていくことが、結果として最短距離になります。

本記事で紹介した考え方は、即効性のあるノウハウではありませんが、担当者として判断に迷ったときに立ち戻れる整理軸として機能します。改善を一度きりの対応で終わらせず、再現性のある取り組みとして続けていくための土台として、活用していただければ幸いです。

著者

松本 洋一郎e-bird(Thailand)Co.,Ltd. Managing Director / WEBディレクター

WEBディレクターとして多数のWEBサイト制作に従事。マーケティングの知見を基盤に、コンテンツの企画・設計やSEOを考慮したライティングまで幅広く対応している。