良いWEBデザインの見分け方 -「理屈」と「表現」の二軸で成果につながるデザインを見極める-

はじめてWEBサイト制作を担当することになったとき、多くの人が最初に直面する疑問があります。それは「良いWEBデザインって何だろう?」というものです。
制作会社から上がってきたデザイン案を見ても、「かっこいい」「シンプルで好き」といった感想は出てくるものの、それが本当に良いのかどうか、ビジネスの成果につながるのかまでは判断しづらいはずです。
ここで大事なのは、デザインは単なる見た目の美しさではなく、成果を生むための仕組み だということです。成果につながるかどうかを見極めるには、二つの観点が欠かせません。ひとつは「使いやすさ」「読みやすさ」といった理屈で説明できる要素。もうひとつは「印象的なビジュアル」「感情に響くストーリー」といった感覚的な要素です。
この記事では、この二つを 「左脳的要素(理屈)」と「右脳的要素(表現)」 と呼び、両軸からWEBデザインを見分けるための考え方をご紹介します。
成果につながるデザインは「理屈」と「表現」の両輪でできている
WEBデザインを評価するとき、多くの人はまず「見た目がきれいかどうか」に目を向けがちです。もちろん第一印象は大切ですが、それだけでは十分ではありません。デザインは単なる装飾ではなく、ユーザーを動かし、最終的にビジネスの成果につなげるための仕組みです。
そのために押さえておきたいのが、デザインを支える二つの側面です。ひとつは「理屈」で説明できる要素、もうひとつは感覚的な「表現」の力です。この二つは車の両輪のように、どちらか一方が欠けても機能しません。

左脳的要素(理屈)
サイトを訪れた人が迷わず目的を果たせるようにするための仕組みです。ナビゲーションの分かりやすさ、情報の階層整理、文字の読みやすさ、アクセシビリティ対応などが含まれます。これらは論理的に説明でき、チェックリスト化しやすい特徴があります。
右脳的要素(表現)
サイトを訪れた人の心を動かすための力です。大きなビジュアルのインパクト、感情に訴えるコピー、ブランドの世界観を徹底して表現したレイアウトなどが該当します。数字で測るのは難しいですが、ときには理屈を超えて成果に直結することもあります。
「理屈だけ」では無難で退屈なデザインになりがちですし、「表現だけ」では使いにくくて成果に結びつかない場合があります。重要なのは、この両方をどう組み合わせるかです。
WEBデザイン要素の二軸マトリクス
前述のとおり、WEBデザインには「理屈」と「表現」という二つの側面があります。しかし実務の現場では、この二つのバランスが崩れ、「理屈は整っているが表現が弱い」「表現は強いが理屈が追いついていない」といった状況が少なくありません。
そこでこの二つをあわせて考えるためのフレームとして、「WEBデザイン要素の二軸マトリクス」 という整理方法をご紹介します。これはデザインを評価する際に活用している考え方を図式化したものです。横軸に「左脳的要素(理屈)」、縦軸に「右脳的要素(表現)」を置き、デザインを四つのゾーンに分けて捉えることで、自社のサイトがどの位置にあるのかを直感的に把握できるようになります。

❶ 未成熟ゾーン(理屈も表現も弱い)
・操作がしにくく、文字も読みにくく、ビジュアルも古臭い
・成果につながらない典型例で、改善が最優先
❷ 安心ゾーン(理屈は強い/表現は弱い)
・ナビゲーションやレスポンシブ対応など基本は押さえられている
・読みやすく安全だが、感情に訴える部分が弱く印象に残らない
・多くの企業サイトはまずこの状態に到達する
❸ 魅力ゾーン(理屈と表現のバランスが良い)
・UXや読みやすさの基盤を押さえつつ、ビジュアルやコピーで魅力を加えている
・「わかりやすく、かつ印象にも残る」デザイン
・成果につながりやすく、コーポレートサイトが目指すべきスタンダード
❹ 飛躍ゾーン(表現が圧倒的に強い)
・圧倒的なビジュアルインパクトやストーリーテリングで心を動かす
・UX的には多少の弱点があっても、感情を揺さぶり成果を生む
このマトリクスを意識すると、自社のサイトがどの位置にあるのかを客観的に把握しやすくなります。
最近はノーコードで簡単にWEBサイトを作れるツールも増えていますが、専門的なWEBデザインの知識や技術がないまま一般の方が利用すると、どうしても「❶未成熟ゾーン」から「❷安心ゾーン」あたりにとどまりやすくなります。最低限の体裁は整うものの、成果を押し上げるには「❸魅力ゾーン」や「❹飛躍ゾーン」を目指すことが重要です。まずは自社サイトをマトリクスに当てはめ、現状を確認してみましょう。
目的別に見分けるデザインの要素
マトリクスを使うと、自社のデザインが「理屈」と「表現」のどの位置にあるのかを俯瞰的に把握できます。ただ、実際のデザインレビューでは「何を基準にチェックすればいいのか?」という、より具体的な視点が必要になります。
マトリクスの各軸に対応する要素を4つに分解して具体的に見ていくと、改善ポイントが明確になります。左脳的な観点では『使いやすさ』『読みやすさ』、右脳的な観点では『伝わりやすさ』『心を動かす』がキーになります。

❶ 使いやすさ(UX向上)
ユーザーが迷わず目的を達成できるかがポイントです。
・ナビゲーションが直感的に理解できる
・階層が深すぎず、必要な情報に数クリックでたどり着ける
・PC・スマホどちらでも快適に操作できる 等
こうしたUXの工夫は、ユーザーが意識せず自然に行動できるようにする「見えない力」とも言えます。詳しくは、こちらの記事で解説しています。
❷ 読みやすさ(情報伝達の最適化)
せっかく訪れてもらっても、文字が読みにくければ意味がありません。
・適切なフォントサイズと行間
・背景色と文字色のコントラスト
・適度な改行や余白で文章が整理されている 等
❸ 伝わりやすさ(ブランドや価値の表現)
企業が何を大切にしているかを一瞬で理解させる力が必要です。
・見出しや本文の強弱で視線誘導ができている
・写真や動画がサービスや製品の価値と直結している
・サイト全体で色やスタイルに統一感がある 等
❹ 心を動かす(クリエイティブ表現力)
理屈を超えて成果を押し上げる要素です。
・第一印象で「すごい!」と思わせるビジュアル
・コピーとビジュアルが連動したストーリー性
・サイト全体に没入できるブランド体験 等
特に、この「心を動かす力」はユーザーの注意を引き、行動を促す大きな原動力となります。関連して、デザインがユーザーの「無関心の壁」をどう突破できるのかについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
実践のポイント 〜自社サイトを評価してみる〜
ここまでで「理屈と表現の二軸」や「目的別の要素」を整理してきました。理論として理解するだけでも役立ちますが、実際に成果につなげるには、自社のWEBサイトを具体的に評価してみることが大切です。
評価といっても難しいものではありません。マトリクスに当てはめてみたり、先ほどの要素ごとに簡単なチェックをしてみるだけで、自社サイトの強みや弱み、改善の方向性が見えてきます。
ここからは、担当者がすぐに実践できる「自社サイトを評価するためのポイント」をご紹介します。
実際に自社サイトをこのマトリクスに当てはめてみましょう。
・まずはチェックリスト的に「理屈(左脳)」の要素を評価
・次に、印象や感情に訴える「表現(右脳)」を自己評価
・「安心ゾーン」にとどまっているなら「魅力ゾーン」を目指す
・競合との差別化を図りたいときは「飛躍ゾーン」に挑戦
社内でデザインを検討するときにも、「理屈の観点」と「表現の観点」を分けて話すと合意形成がスムーズになります。「好みの話」になりがちな議論を、目的や軸に基づいた話に変えることができるからです。
まとめ
良いWEBデザインは「見た目がきれい」であるだけではなく、理屈に基づく使いやすさと心を動かす表現力の両方を備えています。
二軸マトリクスを使うことで、自社サイトがどのレベルにあるのか、どこを改善すべきなのかが明確になります。
まずは自社サイトを当てはめて現状を確認し、次のステップとして「魅力ゾーン」や「飛躍ゾーン」を目指してみましょう。これが、成果につながるWEBデザインを見分ける第一歩となります。
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