
BtoBにおけるWEBサイト設計では、ターゲットの行動パターンや意思決定プロセスを正確に捉えることが成果に直結します。
特に、日本人とタイ人ではカスタマージャーニーには違いがあり、その違いを理解せずに同一設計で進めると機会損失につながりかねません。
本記事では、カスタマージャーニーマップの基本をおさらいしながら、BtoBサイト制作において押さえるべき「国別の設計ポイント」について考察します。
タイ市場をターゲットとする際の実践的な視点として、ぜひ参考にしてください。
カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーマップとは、仮想の顧客(ペルソナ)が商品やサービスを知り、購入に至るまでの過程を、段階ごとの行動や感情とともに可視化したものです。
このカスタマージャーニーマップは、WEBサイト制作やマーケティング戦略を立てる最初の段階で作成します。ターゲットの動きや心理を事前に分析することで、「どのタイミングで、どんな情報やサポートが必要になるのか」を明確にし、適切なアクションを設計するためです。
カスタマージャーニーマップを作成することで、WEBサイトデザインやコンテンツ設計の方向性がはっきりし、不要な作業や施策のズレを防ぐことができます。さらに、マーケティング施策の説得力を高めたり、社内での提案や意思決定をスムーズに進める資料としても活用できます。
つまり、カスタマージャーニーマップは「単に顧客行動を整理するため」ではなく、「ターゲットに確実にアプローチし、成果を出すための設計図」として、非常に重要な役割を果たします。

日本人とタイ人のカスタマージャーニーマップの違い
日本人とタイ人では、カスタマージャーニーの作られ方に違いが生まれます。その要因は、性格や利益意識、社会経験の違いに基づくものです。
日本人ターゲットは、一つの決定に対して完璧な情報を求める傾向が強く、失敗を極端に嫌う傾向があります。これは、多くの日本人担当者が社内での説明責任や発注決定のコストに大きな重みを感じていることから来ています。いかに正確な情報を集め、全ての要素を満たしてから決定するスタイルを欲する傾向にあります。
一方、タイ人ターゲットは、決定までのスピードを重視し、情報を全て取り入れる前に一度試してみる、行動しながら計画を修正するような思考が感じられます。より実際的で、成功を体感してから決定するパターンが強いのが特徴といえます。
例えば、日本企業ではWEBサイト内に詳細な取引実績や第三者による評価が発注の決め手になることが多く、タイでは「速い返信」「実際に会って話せる」などレスポンスの良さが次の行動を促す大きな要素になることが多くあります。
これらは、社会経験やビジネスススピード、コミュニケーションツールの違いなどから生じますが、このような思考の違いを意識した上でカスタマージャーニーマップを設計することが重要と言えます。
日本人向けカスタマージャーニーマップの例
以下の図は、日本人のビジネスパーソンを対象としたカスタマージャーニーマップを可視化したものです。※業種や企業規模、導入商材の性質によって顧客の行動や判断プロセスは異なるため、本図はあくまで一例として参考にしてください
認知から発注までの5つのステージにおいて、「顧客行動」「接触ポイント」「感情変化」の3軸で整理しています。

日本人ターゲットの特徴として、情報収集段階から発注に至るまで一貫して「慎重」である点が挙げられます。特に「検証」「社内説明」の段階では、信頼性のある実績や客観的な資料が重視され、社内での説明責任や稟議通過を前提とした意思決定が求められます。このプロセスは、たとえ小規模な発注であっても、社内手続きの整合性やリスク回避を重視する日本企業文化の表れといえます。
そのため、BtoBサイトや営業活動においては、単なる情報掲載にとどまらず、「導入事例」「第三者評価」「ダウンロード可能な提案資料」など、社内で活用しやすい信頼材料をタイミングよく提供することが重要です。日本人ユーザーに対しては、裏付けのある“納得感”が購入・発注の鍵となります。
タイ人向けカスタマージャーニーマップの例
一方で、以下は、タイ人ビジネスパーソンを想定したBtoBカスタマージャーニーマップです。

日本人と比べて、タイ人ターゲットは意思決定のスピードが速く、「気になったらまず問い合わせてみる」「発注を先に済ませ、細かい手続きは後から整える」といった実行重視の傾向が強く見られます。
社内承認においても、上司への口頭報告やLINEでの共有が中心となるなど、稟議書や正式資料が前提となる日本型のプロセスとは異なり、現場判断と柔軟なフローが特徴です。
そのため、BtoBサイトにおいては、LINEやチャットボットなど即応できる導線設計や、簡易で視覚的に理解しやすい提案資料の準備が効果的といえます。
加えて、検討段階で時間をかけた比較検討を行わないケースも多いため、サービスの概要や料金体系をわかりやすく明示しておくことも、安心感とスムーズな意思決定を促すうえで非常に有効です。
「比較より体験」「丁寧さよりスピード」「資料より対話」を重視するタイ市場に合わせた設計こそが、信頼獲得と受注獲得の鍵と言えるでしょう。
タイ市場向けWEBサイト設計で注意すべき点
タイ人ターゲットは意思決定までのスピードを重視する傾向が強く、気になった段階で即座に問い合わせやアクションを起こす傾向が見られます。これに対応するため、お問い合わせフォームや電話窓口の他に、LINE公式アカウントやチャットボットといったリアルタイムでの対応チャネルの整備が効果的です。
また、検討期間が比較的短いことから、サービス内容や料金体系についても分かりやすく明示し、ユーザーがストレスなく判断できる環境を整えることが求められます。日本市場向けによく見られるような長文による詳細説明や資料ダウンロードへの誘導だけでは、機会損失につながるケースも少なくありません。
さらに、社内稟議や正式資料による承認プロセスが必須ではない場合も多いため、提案資料も過度に作り込むのではなく、視覚的に理解しやすい簡易な資料や価格表を用意する方が実態に即しているとも言えます。
「比較検討よりも実際に体験して判断する」というタイ市場特有の行動スタイルを十分に理解し、スピード感と手軽さを重視したWEBサイト設計を行うことが、商談機会の最大化に直結するといえるでしょう。
まとめ
カスタマージャーニーマップの基本から、日本人ターゲットとタイ人ターゲットにおける行動特性の違い、そしてそれを踏まえたWEBサイト設計のポイントについて解説しました。
日本人ターゲットは、情報収集から発注までのプロセスにおいて、慎重な検討と社内調整を重視します。そのため、信頼性を高めるための導入事例やホワイトペーパーの提示、社内稟議に活用できる詳細資料の提供が重要になります。一方で、タイ人ターゲットは「まず行動してから判断する」傾向が強く、即時性や手軽さを重視します。迅速なレスポンスが可能なツールの導入、簡潔で視覚的に理解しやすい情報設計、そして明確な料金提示が有効に機能します。
ターゲットの文化や意思決定スタイルを踏まえた設計を行わない限り、いくら高品質なサービスや製品を持っていても、適切に価値が伝わらないリスクがあります。特にタイ市場では、比較より体験、丁寧さよりスピード、資料より対話を意識したアプローチが受注率向上に直結します。
BtoBサイト設計においては、ターゲットごとのカスタマージャーニーを具体的に描き出し、それに即した導線設計とコンテンツ設計を行うことが、成果を最大化するための鍵となるでしょう。